以前、土地価格比準表の分析について、否定的なことばかり書きました。
従来のやり方では、原理的にうまくいかないというお話でした。
長年この問題について考えてきたのですが、最近パソコンやプログラム環境が向上したこともあって、積年の問題をかなり解決する分析手法を開発しました。
自分的にはかなり画期的な出来事なので、弁理士さんに相談して、過去の似た特許を探してもらいました。類似の特許は先例がなく、またやや志向は違うもので、かなりくだらない内容でも認められているので、これはいけるのではないか、という心証を得ました。
それで半年くらい前から出願の準備を進めていました。
「土地価格比準表最適化プログラム(出願番号2014-105271)」という名称です。
簡単に説明しますと、こうです。
1.
あらかじめ価格形成要因ごとに複数の比準表を登録しておきます。例えば、道路幅員に関するもので、今使用しているものを①番、そのバリエーションを②~⑩で、計10種類です。ほかの要因についても複数用意します。
2.
すでに価格調整されている路線から、その他要因(比準表に基づかない要因、個別の路線の価格調整で使用する)による格差を0にする。
3.
すると価格調整されている路線について、既存の比準表を使って計算をすると当然、正しい路線価(価格調整後の路線価)と計算後路線価に差がでる。
4.
この差がなるべく少なくなるような比準表を見つけることができれば、その他要因による補正をあまり行わなくても良くなる。つまり、比準表の精度が向上する。
5.
さて、いまたくさんの比準表がプログラムに登録されている。仮に10要因に10づつ比準表があるとすると、10の10乗の組み合わせが存在する。これらのすべての組み合わせについて計算することはもちろん不可能である。そこで、あらかじめ計算順位を決めておく。例えば、道路幅員が1番、最寄り駅への接近性が2番というように、重要と思われる要因から順に順位付けしておく。そして、その順番に比準表のバリエーションを振っていく。
6.
例えば、道路幅員について①~⑩をすべて計算してみた。それ以外の要因は既定値①を採用する。その結果、例えば⑤がもっとも路線価の差の総和が少なくなったとする。道路幅員は⑤を採用する。次に最寄り駅への接近性について①~⑩をすべて計算する。このとき道路幅員は⑤を採用する。ほかの要因は既定値①を採用する。すると、例えば③がもっとも路線価の差の総和が少なくなった。
7.
これをすべての要因について続ける。このやり方なら10×10の計算をすれば終わる。つまり、100回比準計算すればよい。これくらいなら最近のPCとプログラム環境を使えば計算可能である。
8.
すべての要因について採用された比準表は、過去に価格調整された結果を反映しており、少なくとも既存の比準表よりも精度が高い。
さて、この手法でなにが画期的かといいますと、状類を跨いだ解析をしていない、ということにあります。
例えば、従来の多変量解析では、主要路線の要因データと価格をもとに回帰分析をしていました。
例えば、ある比準表種類のなかに100個状類があったとして、100個のデータから回帰分析していました。
ところが価格形成要因には幅員や駅距離のように数値化可能な要因と、居住環境のように数値化不能な要因があります。もちろん解析は数値データに対してしかできませんから、数値化不能要因の影響を無視して解析することになります。
そもそもなぜ状況類似が存在するかというと、数値化不能要因の影響をなるべく排除するために、数値化不能要因がまあまあ同じではないかという範囲を区切っているわけです。ところが解析の段階ではこれを無視して、異なる状類のデータを同じ鍋に入れて解析していたわけです。
これでは精度がでるはずがありません。
今回の発明は、比準計算を状類の中で行っています。実際の路線価計算と同じ計算を100種類用意した比準表全てに適用して、より精度の高い比準表を選択しています。状類の中で計算しているので、数値化不能要因の影響を排除できます。ここが従来手法と決定的に違うところです。
せっかく作ったので、これから積極的にPRしていきたいと思います。